Character 06
副官の仕事
夜の執務室は静かだった。
灯りは机の上だけ。
書類が積まれている。
ランスは椅子に座ったまま、報告書をめくっていた。
扉が開く。
カーティスが入ってくる。
机の前に立つ。
少し黙ってから言う。
「隊長」
ランスは顔を上げない。
「どうした」
カーティスは机の上を見る。
書類。
地図。
携帯食の包み。
そして言う。
「宿舎に帰ってますか」
「帰っている」
「いつですか」
ランスは一瞬考える。
「……昨日」
カーティスはため息をつく。
「昨日の朝ですよね」
ランスは答えない。
カーティスは机の端を指で叩く。
「食堂」
ランスは言う。
「食べている」
カーティスは包みを見る。
「それですか」
「問題あるのか」
「あります」
静かに言う。
「携帯食は三日連続で食べるものではありません」
ランスは書類をめくる。
「効率はいい」
カーティスは腕を組む。
「効率の話ではありません」
少し黙る。
それから言う。
「仮眠もここですよね」
ソファを見る。
毛布が畳んである。
ランスは答える。
「近い」
「近いでしょうね」
カーティスは言う。
「隊長」
ランスが顔を上げる。
カーティスは真顔で言う。
「自分は何のための副官ですか」
ランスは少し黙る。
「補佐だ」
「そうです」
カーティスは頷く。
「補佐です」
それから机の上の書類を指す。
「これは誰の仕事ですか」
「私だ」
「これは」
「私だ」
「これは」
ランスは言う。
「……私だ」
カーティスは静かに言う。
「半分は自分の仕事です」
執務室が少し静かになる。
ランスは書類を見ている。
カーティスは続ける。
「宿舎に帰る」
「食堂で食べる」
「寝る」
指を三本立てる。
「それが隊長の仕事です」
ランスは少し眉を寄せる。
「仕事ではない」
カーティスは言う。
「仕事です」
そして付け加える。
「隊長が倒れると困るのは、自分です」
しばらく沈黙が続く。
ランスはゆっくり椅子から立つ。
書類を一つまとめる。
机に置く。
それから言う。
「……食堂はまだ開いているか」
カーティスは小さく頷く。
「開いています」
ランスは少し考える。
それから言う。
「味は分からない」
カーティスは答える。
「栄養が取れれば十分です」
二人は執務室を出る。