Character 21
詩集
部屋の机の上に、メモ用紙がある。
訓練記録の端。
報告書の余白。
封筒の裏。
エレインはときどき、そこに言葉を書きつける。
意味を整える前に、落ちてきたものをそのまま置く。
それは詩というほど整ってはいない。
ただ、通り過ぎた感覚の記録のようなもの。
雨
雨は
空から落ちてくるのではなく
地上に
戻ってきているのかもしれない
土が
静かに呼んでいる
夜
夜は
暗いというより
音が
遠くなる時間
遠くなった音のあいだに
自分の呼吸がある
雪
雪は
世界を覆うのではなく
輪郭を
やわらかくする
かたいものも
少し丸くなる
灯り
机の灯りは
小さな太陽
その周りで
紙が昼になる
パン
生地は
押すと
ゆっくり戻る
世界も
同じ速さで
戻るのだろうか
風
風は
どこから来るのだろう
葉は知っているようで
何も言わない
眠り
眠るとき
体は
重くなるのではなく
地面に
思い出される
書くこと
言葉は
考えて書くより
落ちてくるほうが
静か
紙は
それを受け止める場所
そして最後の紙には、こう書いてある。
言葉は
書くと
少し
遠くなる
遠くなった言葉は
誰かのところへ行くのかもしれない
エレインはペンを置く。
机の灯りの下で、
紙はただ静かにそこにある。