Character 22
模擬戦
首都軍演習場。
訓練用の結界が展開された広場で、数名の魔術師が足を止めていた。
理由は単純だった。
珍しい組み合わせだからだ。
グラント准将。
そして。
ランス・ヴァレン中佐。
歴代首都魔術師隊隊長。
それだけで十分だった。
カーティスは少し離れた場所で腕を組んでいる。
「また始まったな」
隣の若い魔術師が呟く。
「また?」
「年に一回くらいはやる」
「結果は」
カーティスは少し考えた。
「同じだ」
その時。
開始の合図が鳴った。
ランスが踏み込む。
速い。
訓練用の木剣が一直線に伸びる。
迷いがない。
無駄もない。
教本に載せたくなるような軌道だった。
グラントは半歩ずれた。
それだけ。
剣先が空を切る。
「……」
ランスは止まらない。
二撃。
三撃。
四撃。
速い。
だが。
当たらない。
グラントは受けない。
弾かない。
避ける。
ほんの少し。
必要な分だけ。
五撃目。
その瞬間。
木剣の先端が僅かに流れた。
「そこだ」
気付いた時には遅かった。
足首。
軽く払われる。
視界が傾く。
ランスは即座に受け身を取る。
転倒ではない。
体勢を崩しただけ。
だが。
木剣の先端が首元へ向いていた。
終了。
静寂。
若い魔術師たちが固まっている。
「……今の何ですか」
誰かが呟いた。
カーティスは肩を竦める。
「いつものだ」
ランスは立ち上がる。
服の埃を払う。
無表情。
だが。
ほんの少しだけ、機嫌が悪い。
グラントは気付いていた。
「またか」
「……」
「顔に出てるぞ」
「出ていません」
即答だった。
カーティスが吹き出す。
「いや、出てる」
「出ていません」
グラントが鼻を鳴らした。
「昔から変わらんな」
ランスは木剣を戻す。
「勝てません」
珍しい言葉だった。
周囲が静まる。
ランス自身が認めたからだ。
グラントは少し考えた。
「お前」
「はい」
「真面目すぎる」
「……」
「勝とうとしすぎだ」
ランスは黙った。
グラントは続ける。
「正解を探してる間は勝てん」
「ならどうしろと」
「喧嘩しろ」
沈黙。
ランスは本気で意味が分からなかった。
グラントは肩を回した。
「まあ無理か」
「……」
「お前、育ちが良すぎる」
ランスの眉が僅かに動いた。
若い魔術師たちは理解していない。
ただ一つだけ分かることがあった。
首都魔術師隊隊長は、
グラント准将の前だと、
少しだけ若かった。