Fragment 14

秋分の鎮魂

 秋の終わりの夜、都市は少し早く静まる。  店の灯りは落とされ、広場の楽団もいない。  窓の向こうでは、人々が静かに食卓を囲んでいる。  騒ぐ日ではない。  それを、都市の誰もが知っている。  大広間の前庭には、軍の隊列が整えられていた。  礼装の将兵が、等間隔に立っている。  剣も銃も持たない。  ただ、直立している。  その背後、石の階段の上に、魔術師隊の姿があった。  濃紺と銀の礼装。  数は多くない。  誰も言葉を発しない。  結界塔が、遠くで淡く光っている。  やがて王が現れた。  深い青の礼装。  歩みはゆっくりしている。  護衛も、儀仗も、いつもより少ない。  王は階段の中央で立ち止まった。  言葉はほとんどなかった。  ただ短く言う。  「今夜、この国の静けさを守ってきたすべての人に」  それだけだった。  楽団も鳴らない。  合図もない。  しかし広場の空気が、静かに止まった。  軍人たちが頭を下げる。  魔術師も同じように、静かに目を伏せる。  都市の灯が、遠くで揺れている。  風がわずかに吹いた。  冬の匂いが混じっている。  しばらくして、王が顔を上げた。  それが合図だった。  隊列は崩れないまま、軍人たちはゆっくりと姿勢を戻す。  魔術師隊の中で、銀髪の女性が静かに空を見上げた。  雲は薄く、星が見える。  その横で、軍礼装の男が結界塔の方角を一度見た。  異常はない。  都市は変わらず守られている。  それを確認すると、男は何も言わずに視線を戻した。  人々はまだ黙っている。  今夜は、そういう夜だからだ。
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