Fragment 17
西方海域協議、アルカ島問題で両国代表が会談
──首都カルナリア報道局
首都カルナリアで本日、西方海域のアルカ島を巡る問題について、カルナリア政府とヴァルディア王国代表団との公開協議が行われた。
会談は外務省庁舎の大理石会議室で開かれ、両国の外交官、海洋監督官、宗教顧問らが出席した。
協議は各国報道機関にも公開され、国内外の注目を集めている。
アルカ島は西方海域に位置する小島で、古くからカルナリアの結界柱が設置されている地点として知られる。
近年、ヴァルディア王国は同島を「自国海域に属する歴史的領土」であると主張しており、周辺海域では緊張が続いている。
カルナリア外務次官アデル・マリウスは冒頭で次のように述べた。
「アルカ島は古層結界の維持拠点であり、地域全体の海洋安定に寄与しています。
我々の結界は防衛と環境保全を目的としたものであり、周辺国家に対する敵対行為ではありません」
これに対し、ヴァルディア王国代表の神務評議官エルダンは強い口調で反論した。
「問題は領土の帰属だけではありません。
カルナリアの結界は、人の手で海と天の秩序を歪める術です」
会場が静まり返る。
「世界の力は、人が操るために与えられたものではない。
それは神の領域です」
ヴァルディア代表団の背後に座っていた聖職顧問が、静かに頷いた。
この発言に対し、カルナリア側は声を荒げることなく応じた。
「我々の技術は自然の流れを破壊するものではありません。
むしろ乱れた流れを整えるためのものです」
カルナリア海洋観測庁の技術官が、海流図と魔力流の観測データを示す。
「アルカ島の結界は三百年以上にわたり西方海域の魔力乱流を安定させてきました。
もし撤去すれば、海域全体の均衡が崩れる可能性があります」
ヴァルディア代表はその資料に目を落としたが、首を横に振った。
「人の理屈で世界の秩序を測るべきではない。
創造の理は、神のみに属する」
議論は再び領土問題へ戻るはずだった。
しかし議場の空気は、すでに別の場所へと流れていた。
島の帰属を巡るはずの会談は、いつしか
世界の力は誰のものか
人はそれに触れるべきか
という問いへと移っていく。
会談は三時間に及び、最終的な合意には至らなかった。
両国は来月、第二回協議を行う予定である。
外務省関係者は会談後、次のように述べた。
「アルカ島は小さな島ですが、問題は島そのものではありません」
窓の外では、初夏の風が旗を揺らしていた。
西方海域を巡る議論は、まだ終わっていない。