Fragment 21
東方魔道具
首都カルナリア、港湾監理局の内陸倉庫。
木箱がいくつも並んでいた。
東方船団が持ち込んだ交易品の検査である。
書記官が蓋を開けると、布に包まれた小さな器具がいくつも現れた。
側にいた魔術師が身を乗り出す。
「……これか」
指先で一つ持ち上げる。
金属の枠の中に、米粒ほどの結晶。
周囲には細い刻線が走っている。
彼はしばらく黙って見つめていた。
「……すげえな」
隣の術士が覗き込む。
「小さいな」
「いやそこじゃない」
指で刻線をなぞる。
「この術式の細かさ」
刻み込まれた線は、髪の毛ほどの幅だった。
もう一人の術士が低く言う。
「器用だなあ……」
少し感心した声だった。
倉庫の隅では、港の検査官が帳簿を書いている。
魔術師は器具を軽く振った。
結晶がわずかに光る。
薄い光だった。
昼の倉庫では、ほとんど目立たない。
「……これ、何に使うんだ?」
書記官が紙を見た。
「東方語の説明では……携帯灯具」
術士が顔を上げる。
「灯り?」
「はい」
沈黙。
魔術師たちはもう一度器具を見る。
「これで?」
誰かが笑った。
「出力、小さすぎない?」
別の術士が肩をすくめる。
「まあ民間用だろ」
「民間に魔術?」
その言葉に、少し奇妙な間が落ちた。
カルナリアでは魔術は基本的に
軍
国家施設
儀礼用途
に限られている。
術士は器具をもう一度裏返す。
刻線はきれいだった。
無駄がない。
「……これ、全部手で刻んでるのか?」
書記官が肩をすくめる。
「おそらく」
術士が小さく息を吐いた。
「すごいな」
隣の魔術師が言う。
「うちの工廠、こんなの作らないぞ」
「作らないというか……」
彼は箱を見た。
同じ器具が何十個も並んでいる。
「これを民間に?」
また短い沈黙。
やがて誰かが言った。
「まあ……面白いな」
魔術師は小さな灯具をもう一度振った。
薄い光が、倉庫の影にかすかに浮かんだ。