Fragment 26
白の港
南の港町は、光が強い。
白い壁が並び、日差しをそのまま返している。
目を細めないと、輪郭が少し滲む。
港には船が寄せられている。
白い軍服の兵士たちが、甲板を行き来している。
短い号令。
縄が引かれ、水が落ちる。
音は多いが、乱れてはいない。
その中に、濃紺の外套が一つだけある。
魔術師だった。
動きは遅く、他の者とは歩調が合わない。
だが邪魔にもならない。
白の中に、夜の色が混じっている。
彼は港の端へ向かう。
軍港の奥は、少しだけ静かだ。
同じ海でも、出入りが制御されている。
境界が、目には見えない形で引かれている。
魔術師は足を止める。
海面は穏やかだった。
光が強く、波の縁が白くなる。
彼はそれを見ていない。
もっと奥の、密度の揺らぎを測っている。
「流入、安定」
低く記録する。
外から来るものは、ここで一度ほどかれる。
強すぎるものは、散らされる。
白い兵士が横を通る。
視線は一瞬だけ向けられるが、すぐに外れる。
役割が違う。
港の内側に、川の口がある。
海の青が、そこでわずかに変わる。
荷が分けられている。
すぐに上げるもの、
少し置くもの、
流していくもの。
通りの方から、パンの香りが届く。
白い壁のあいだを、熱がゆっくり抜けてくる。
魔術師はわずかに顔を上げる。
それから、また海へ視線を戻す。
「上流、問題なし」
記録を残す。
同じ水が、この先を進む。
白い町を離れ、
やがて静かな首都へ入る。
そこでは、光はもう少し柔らかい。
ここは、その手前にある。